不動産クラウドファンディングシステムの相場とは?注意点とは?
(小規模)不動産特定共同事業によるクラウドファンディング事業を検討している企業担当者は、まず何から調べるべきでしょうか。
今回は弊社がクラウドファンディングを自社開発しようとした時の調査・経験をもとに、相場感やどのようなところに注意すべきかをまとめました。
参考になれば幸いです。
クラウドファンディングシステムの価格相場
まず知りたいのは相場感だと思いますが、これはかなりピンキリです。
全て弊社が自社開発を検討した時の情報ですので、最新の情報とは異なることがございます。あくまで参考としてご覧下さい。
【汎用クラウドファンディングシステム】
汎用クラウドファンディングシステムとは、一般的なクラウドファンディングサイトを運営するためのシステム構成です。非常に安価ですが、不特事業に適合するには、様々な改修が必要になります。
・Wordpress ベース + 海外製のクラウドファンディングプラグイン
→価格 年間5万円~10万円
クラウドファンディングのプラグイン自体は数万円程度で手に入ります。しかし、法令に適合しない部分があるため、社内にエンジニアが居ない場合は利用できません。
・汎用クラウドファンディングパッケージサイト
→価格 年間30万円~100万円
不特事業以外のクラウドファンディングサイトを運営する目的のシステムです。こちらも不特事業に適合しない部分があるため、その改修を含めると1000万円を超えてしまいました。また不特法に詳しいわけでもないため、要件定義にかなり時間がかかります。
※要件定義:どのようなシステムにするか決めること
【不特事業クラウドファンディングシステム】
・A社
→価格 1500万円~2000万円
業界でいち早くクラウドファンディングシステムを開発したシステム会社です。パッケージ化はしておらず、フルスクラッチ(0から開発すること)で作り上げていきます。すでに開発経験があるため、不特事業に適合しない心配は少ないですが、費用も相応に高額でした。(自社調べ)
・B社
→価格 1000万円~1500万円
現在、不特事業用クラウドファンディングシステムを検索すると上位に出てくるパッケージ型システム。パッケージ化しているので費用は抑えめですが、それでも多くの中小不動産会社にとっては厳しい価格ではないでしょうか。(自社調べ)
・C社
→価格 2000万円
広告代理店が開発元となったクラウドファンディングシステム。自社メディアとの合わせ技で投資家へ訴求する効果があるようですが、その分費用は高額でした。システムの大部分が自動化されており、作業量も軽減できそうな印象でした。(自社調べ)
システム構築費用が高い理由
不動産業を営んでいる私たちにとって、「なぜこんなにシステムが高いのか」は疑問になると思います。
多くのIT会社では、構築費用の見積りを算出するときに「人月(一人が一ヶ月働いた時の作業量)」を用います。
フルスクラッチで作成する場合、すでに開発したことがある構成であればより高い精度で人月を予想できますが、初めての構成であったり法令により作るシステムが不透明だと算出しにくいため価格が高くなる傾向にあります。
そこでパッケージ化することで工数を抑えて開発できるようになりますが、システム開発の受注が収入源であるシステム会社にとっては、開発余地を残しておいて、追加発注を取る必要があります。
特に近年は優秀なエンジニアを確保するには多額の資金が必要ですから、システム会社にとっては受注単価を下げると優秀なエンジニアを維持できなくなり、さらに受注単価を下げることに繋がります。
それとは違う理由で、システム開発を受注するうえで最も嫌われるのが「後から仕様を変更する」ということです。
初めて不動産投資クラウドファンディングを始める不動産会社にとって、一発で要件定義するのはとても難しいものです。準備を進める中で初めて「このシステムはこうなっていないといけない」と気づくことも多々あります。
これもまた追加費用が発生し、後から費用がかさむ理由になります。
検討時の注意点
①年間何億円を運用目標とするか
②手作業の許容量
③見た目をどのくらい重視しているか
④既存システムの連携をするか
システムの構築価格を検討するうえで、大きな要因となるのがこの4つです。
自社の資金力やブランド力、人員などを考慮して見当をつけてみましょう。
①年間何億円を運用目標とするか
これはシステムに必要なデータ容量に関係します。
多くのデータベースサービスでは、レコード数や容量に応じて課金する方法のため、大規模な運用を目標とするとそれだけ大容量のデータベースを確保する必要があります。
レコード数とは、データベースの数え方で、EXCELの1行が1レコードに相当します。
会員数や投資応募数がレコード数に直結するため、会員規模が大きくなるにつれ使用レコード数も増加します。
その点も踏まえて、年間何億円程度を運用目標とするかで、おおよその月額データベース費用を算出することができます。
②手作業の許容量
クラウドファンディングを運用するうえで必要な作業としては
・新規会員登録時の本人確認作業
・本人確認ハガキ送付作業
・投資申請の抽選確定作業
・入金確認作業
・配当振込作業
などがあります。
これらのうち、どこまで自動化するかによって利用するサービスや連携費用などに差が出てきます。
当然、なるべく全て自動化してあれば楽ですが、その分コストは増しますので、目標の運営規模や人員を考慮して決めましょう。
③見た目をどのくらい重視しているか
当然、見た目やUI*を凝れば凝るほど費用は膨らみます。
(*UI ユーザーインターフェース 利用者が操作する部分のこと)
具体的には、例えば投資口数の増減を「数字を入力するもの」を「ボタンを押して増減するもの」に変えるとかっこよくなりますが、その分費用は増えます。
【システム構築費用の増加につながりやすいもの】
・文字や数字が都度変わるもの
・入力した数字や登録されたデータによって表示が変わるもの
・人によって表示されるデータが変わるもの
これらをいじろうとすると費用が膨らみやすいです。
【システム構築費用にそれほど影響を与えないもの】
・誰にでも同じものを表示するもの
これは複雑な構築は不要なのでそれほど費用増加にはなりません。
システムの構築費用を見積もる時や、要件定義の時にはこの点に注意しながら欲しいものと不要なものを決めていくと、費用の増加を抑えることができるでしょう。
UIの美しさやかっこよさは、利用者の操作しやすさやブランディングなどにも直結するため、自社としてどこまでこだわるべきかのライン引きをする必要があるでしょう。
④既存システムの連携をするか
クラウドファンディングを導入検討している会社の多くはCRM(顧客管理ソフト)やSFA(営業支援ソフト)などを利用していると思います。
これらのソフトと顧客情報などを連動できればと思う方は多いと思います。
システムの連携方法はいくつかあります。
・手動でCSVを取得し、一括登録する。
・バッチ処理で、毎日ある時間にまとめて登録する。
・API連携で都度、登録する。
こういった連携はクラウドファンディングシステム側の問題と連携相手側の問題があります。
両者がAPIを公開していれば、スムーズですが、APIを公開していない場合はシステム間で交渉したり要件を揃えたりといった作業が必要になり、当然構築費用も増加します。
APIを公開しているシステム同士で、連携の難易度が低ければそれほど高額にはなりません。
まとめ
今回は弊社での経験を踏まえ、開発方法と相場の目安と開発時に工数に影響しやすい部分をまとめました。
開発する会社や得意な分野などにより費用は変わります。
不動産特定共同事業をよく理解し、それに合わせて「必要十分」な開発を提案してくれる開発会社を選ぶことが、費用を抑えた開発に繋がります。